翼なき竜
3.有翼の君(2) (4/4)
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竜は鼻から荒い息を出した。後ろ足を立ち上がらせ、一歩前に出る。震動が宰相の足下まで伝わる。徐々に竜は足を速め、近づいてくる。
竜が、地を揺らし走る。そして、大きな口をぐわっと開く。赤い口内に、黄ばんだ鋭い歯。
宰相はこのとき、我に返った。
頭にあるのはただ一念。
守らなくては――宰相は女王に覆い被さるように、倒れる。
竜の足が近くに見えた。
痛みと死を覚悟し、強く目をつぶった。
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