奪ふ男

ジョーカー 3−3 (4/4)
戻る / 目次 / 進む
 きっと僕の心の内を理解してくれたのだろう。それとも、僕の心情が表に出たのだろうか。
「うん。良かった。ありがとう。嬉しいんだ、ルリと以前のように話ができて。……いや、前からそうだね。でも僕はずっと疑って、心が痛かった。僕たちの関係が演技じゃなくて、自然なものだって確認できて、やっと心が落ち着くよ」
 満面の笑みを向ける。
 ルリは表情を変えない。
「そう。……面倒な人間関係のトラブルが解消できて良かったね」
 他人事のように言いながら、じゃあまた明日ね、と別れの挨拶を告げてルリは家に入っていく。
 一瞬、するりと冬の名残のような冷たい風が通り過ぎていった。
戻る / 目次 / 進む

stone rio mobile

HTML Dwarf mobile