奪ふ男

ジョーカー 2−7 (1/4)
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 文化祭の翌日の月曜は振り替え休日となり、火曜日からいつもの学校が始まった。
 僕はさっそく、ルリを呼び出して、鈴山のことは誤解だと伝えようとした。わざわざルリのクラスまで呼びに行ったのは、今日ルリとは一緒に登校しなかったからだ。
 廊下の端まで呼び出したルリは子どものように頬をふくらませて、少しむくれている。
「……鈴山のことだけど」
 僕が切り出すと、ルリはぴくりと反応したものの、眉間にかすかにしわを作って窓の方に顔を向ける。
「……とにかく言えるのは、僕はあいつともう何も関係ないから。付き合ってないから」
 鈴山とそもそも付き合ってないだとか説明すると長くなる。とにかく大事なのは、今現在、あの野郎とは関係ないということをルリに説明することだ。
 ルリは顔の方向を変えず、低い声を出す。
「……夏休みも、会ってたじゃない」
 やっぱりあのとき、ルリは僕と鈴山のことを見ていたようだ。
「あれは偶然。中学が同じだったんだから、会いたくなくても会うことだってあるだろ? ちなみに言うと、僕は高校入学してから奴に会ったのは、その一回だけ。今は一切関係ないから」
 きっぱりと言うと、ルリは僕に顔を向けた。おそるおそるという具合に、ゆっくりと。
「……嘘、でしょ?」
「本当。高校入ってからのこと、思い出してよ。ルリの部活が終わるの待って、一緒に登下校して、いつも一緒にいたじゃないか。僕の時間はルリと一緒で回ってたんだよ。鈴山との時間なんて皆無だよ。一緒にいたんだからわかるよね?」
 まじまじとルリは僕の顔を見る。
「……ほんと、なの」
 そう言うルリの声に、かすかに喜びが混じっているように聞こえたのは、僕の気のせいだろうか。
「うん、本当だよ。だから誤解はしないで。僕はルリのことを――」
 そのときだった。
 どこからか聞き覚えのないメロディが流れてきた。
「あっ、ごめん」
 ルリは慌てて短いスカートの脇ポケットから携帯電話を取り出す。開けて見て、いくつかボタンを押す。電話ではなく、メールのようだ。
 ルリはみるみる険しくなりこわばった顔で、そのケータイのディスプレイ見ている。
 パチン、とそれを閉じたところで、僕は問いかける。
「誰から、どんな内容の?」
 僕とルリが会話しているところに割り込むようなメールだ。誰にも邪魔されたくないから、こうして廊下の端まで来ているというのに。なんて迷惑なものなのだろう、ケータイなんて。
 ルリはうつむき、ケータイを握りしめている。そして言いにくそうにぼそりと応じた。
「陸奥先輩から……」
 陸奥って、あの文化祭のボーカルだよな?
「何で」
 何でルリのケータイにメールが? そもそもどうしてルリのケータイのメルアドを知ってるんだ?
「……昨日、陸奥先輩と……付き合い始めたから……」
 ルリは強く、強くケータイを握りしめる。それは壊さんばかりにも、思いあまってのようにも見えた。
 僕はそのケータイにでもなったかのように、ぐしゃりと骨や内臓、身体全体が壊れそうな気がした。僕が歪んだ。世界が歪んだ。
「……昨日……?」
 かすれた声が出る。
 昨日。昨日……?
 振り替え休日だった昨日? ルリが朝からバイトに行っていた昨日?
「バイトしてて……いつものように陸奥先輩がやってきて……いつものように付き合わないかって誘われて……」
「それで簡単にうなずいたって?」
 僕は低い声で咎めた。

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