翼なき竜
17.竜族の秘(2) (2/5)
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公表して攻め入る気はないということか。
「オレリアン殿。私があなたを愛人とすることはできない。代わりに、あなたたちの知りたい第一目標、竜族と我が国の秘密を教えよう。これで手を打たないか?」
「竜を操る秘技を……!?」
何としてでも隠し通したいはずの秘密を、明かすというのか。
女王は、オレリアンに座るようにうながした。
「我が国と竜族は、契約を結んでいるんだ」
座ったオレリアンは目をぱちくりさせる。
「契約? あの言葉の話せない獣と?」
「そう。数百年前、人竜戦争の終結時に」
人竜戦争なんて、歴史を学ぶときに出てくる単語だ。
驚きつつも、オレリアンは静かに女王の解説を聞いた。
「当時、人と竜は、覇権を争って戦っていた。人間対竜族の総力戦だ。そのとき人間は、各国同盟を結び、力を合わせ、戦っていた。その同盟の盟主が、我がブレンハールの当時の国王。アルマン王だ」
「知っていますよ。結局竜族も人間もどちらも殲滅することはできず、和平を結んだのでしょう」
それは全ての革命だった。
竜は敵という意識が同じ大地に共生する仲間という意識に逆転したのだ。神学にもかなりの影響を及ぼし、現在では竜と人とは対等、ということになっている。
「その和平のとき、アルマン王と竜族の長のみで話し合いが行われた。そして竜族と人間は、和平と協力体制を結ぶことにした」
オレリアンは訝しがる。……協力体制?
「アルマン王に竜は術を施した。竜の血を流し入れて、竜を敵対視しないという呪いだ。その呪いは強力で、彼の血に連なる者に影響した。だがやはりアルマン王に一番影響が出た。彼は竜のあざを頬に持つ、『泰平を築く覇者』の最初の一人だ。アルマン王の子孫にも『泰平を築く覇者』がときどき生まれる」
オレリアンは女王の頬を眺め見る。
「陛下も、その一人ですね」
「そう。ただし、このあざは何の力もないわけじゃない。『泰平を築く覇者』は竜に同族と認められる。ブレンハールの王家の血筋に竜の血筋が混じり込むことは、大きな意味がある。我ら王家の人間は、竜を敵視しない呪いがかかっている。そうして和平が築かれる」
オレリアンは首を傾げた。
「……それで、協力体制というのは?」
「アルマン王に呪いをかけ、王家の血筋に永久的に影響を及ぼす代わりに、竜族は我が王家に協力することになったのだよ。それはつまり、我が王国・ブレンハールに協力するということで――」
オレリアンは顔を青ざめる。
まさか。
協力というのが、
「竜を操る秘技……ですか!?」
女王はうなずく。
「そうだ。技など何もない。昔からの契約で、竜族は我が王国では利用できるだけのことだ」
「ちょっと待ってください。人竜戦争当時、国はブレンハールだけではなかった。確かにブレンハールは大きな国家でしたが、我がドウルリアもあったし、他にもたくさんの国家があった。ブレンハールは対竜同盟の盟主となっただけで、どうしてブレンハールだけが竜族とそのような協力体制を築けるのですか!? 他の国家は!?」
同盟の盟主として和平を結んだなら、契約は同盟を結んだ他の国家にも適用されなければならない。しかし現在、ブレンハールは竜を戦力とし、ドウルリアは竜を戦力にできない。
女王はしばらく黙った。
気まずそうに、
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